石川県金沢市の東証プライム上場のサンウェルズ。 診療報酬不正請求問題が地元でも大きく報じられている。 これについて、社会福祉に関する事業のあり方に関心があるため、調べてみた。
まず、Xのポストを参照する。
9229 サンウェルズ
— stardust2022★ (@stardust202201) 2025年2月9日
インサイダーかどうかはともかくとして、現職の経営者による自社株売りは「企業価値を高める意欲が無い」とみなされます。 pic.twitter.com/pHWE2P3YJb
代表者による株式大量売却が、2024年7月10日と8月9日。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/9229/tdnet/2560658/00.pdf
これを問題視する向きがある。
診療報酬不正請求問題の調査報告書によれば、
「2022 年4月、退去予定のPDハウス入居者から、苗代社長宛に、訪問看護の実態に関する意見書が提出された。同意見書には、計画上29分とされている訪問看護が実際には5分程度で終了する場合が頻発していること、1日3回訪問は不要であり週1・2回でも十分であること等の訪問看護の実施状況に関するクレームが記載されていた。また、同年3月における訪問看護の相当数(全50回)が所要時間5分程度であることが、具体的な訪問日時を列挙して摘示されていた。」p45
「サンウェルズでは、現場の看護師等から、教育部に対し、訪問看護の算定ルールに関して相談や問合せ等がなされることがあった。 2024 年 4 月12日、教育部の職員が、現場の看護師等からの相談事例を踏まえ、長山氏、A 氏、教育部の職員らが参加する会議93において、夜間訪問看護の現状に関する確認を行った。具体的な確認内容は、①訪問時間が実際には数分で終了しても29分の訪問時間として算定することに問題はないのか、②ある入居者の訪問時間中に他の入居者の対応を行うことに問題はないのか、③夜間・早朝訪問について入居者から明確な要望がない場合でも施設側の判断で実施することに問題はないのかとのものであった。 」p46
「サンウェルズは内部通報制度を有しており、社内の一次的な窓口は、監査等委員長の山本英博氏(以下「山本氏」という。)が担当している。2024年2月、あるPDハウスの職員から、同行者不在の訪問であるにもかかわらず複数名訪問看護加算の請求が不正に行われている旨の内部通報が寄せられた。この通報内容は、山本氏から越野氏及び長山氏に共有され、越野氏から苗代社長にも報告された。その上で、越野氏の指示により当該PDハウスに関する社内調査が実施された。 調査の結果は越野氏から山本氏に報告され、問題自体は存在するものの指導・改善がなされているとの結論に至り、その旨が越野氏から苗代社長にも報告され、苗代社長も、上記内部通報に関する対応状況を把握したが、対応方針について異論を述べるなどはしなかった。結果として、この事案は、特定のPDハウスにおける個別の問題事象であると結論付けられた。」p47
「2024 年 5 月頃、他の訪問看護事業者による診療報酬の不正請求に関する報道が出たことを受けて、ある機関投資家が、上野氏に対し、サンウェルズでも同様の不正がないか調査した方がよい旨の助言をした。そのため、上野氏は、2024年6月、D 氏に対して、診療報酬の不正請求の有無を社内で調査するように指示した。 同指示を受けたD氏は、調査方法に関し上野氏及び苗代社長の確認を経た上で、全国の統合管理者 14 名96を対象に、訪問看護の不正に関するアンケートを実施した。その結果、14名中7名が訪問看護の不正行為を直接目撃した又は聞いたことがあるとした上で、以下の回答をしていた。 ① 不正行為の具体的な内容:訪問時間の虚偽記載(1名)、訪問していないのに訪問したと報告(2名)、同行者不在訪問(5名)等(一部複数回答あり) ② 不正行為への対応:上司への報告(4名)、無視(2名)、算定からの除外(1名 )、施設管理者への報告(1名)(一部複数回答あり) ③ 不正の主な理由:業務負担の軽減(5名)、認識不足(5名)、業績向上(3名)等(一部複数回答あり) ④ 不正防止のために必要な措置:不正防止教育の徹底や定期的な実態調査等 」p48
「以上の経緯から、苗代社長を含む現経営陣は、全国のPDハウス等において不正が横行している状況にはないが、教育体制の改善等が必要であるという認識を持つに至り、そのための対応として、教育部を中心に、訪問看護に関する Q&A の作成、コンプライアンスに関する教育体制・研修内容・マニュアルの見直し等が実施されることとなった。 このような経緯を経て2024年6月の社内調査は終了することとなり、アンケート結果を踏まえた実態把握のためのより詳細な調査は行われなかった。」p49
「2024 年8月19日、サンウェルズは、報道機関の記者から、1日3回及び複数名訪問・短時間訪問・同行者不在訪問の実態や、同年6月の社内調査に関する質問状を受領した。 同年8月20日に開催された取締役会では、上記質問状に対する回答方針についての議論がなされたところ、苗代社長は、回答にあたっては、出所や事例を明記すること、ステークホルダー向けの分かりやすい構成とすること、事実関係を改めて調査した上で回答書を作成すること等の指示をした。これを受け、訪問看護に関する社内資料や、過去の厚生局への照会に対する回答を社内的に整理した資料が添付された回答書が作成されることになった。 もっとも、当該回答書を作成するにあたり、短時間訪問及び同行者不在訪問の実態に関して、現経営陣は、上記オで述べた同年6月の社内調査の結果を受け、全国のPDハウス等において不正が横行している状況にはないとの認識でいた。そのため、回答書の内容についても、過去に一部職員の知識不足で類似する事象があったが、その際は、法令に違反しないよう未請求や自主的返還等の処理をした旨が記載されることとなった。 その上で、本件報道の翌日である2024年9月3日、サンウェルズは、本件報道に対する自社の見解を示す適時開示を行い、上記回答書を添付した上で、本件報道に関する事実は一切ない旨を説明した。」p49
となっている。
「本調査において、サンウェルズの現経営陣が、短時間訪問及び同行者不在訪問を従業員に対し指示していたなどの積極的な関与の事実は確認されなかった。 もっとも、サンウェルズ内で短時間訪問及び同行者不在訪問が広まっているとの実態を現経営陣が認識し得る機会が、経営を担う中で、複数回にわたり存在していたものと判断される。しかしながら、現経営陣は、診療報酬の算定ルールに関する理解不足や訪問看護事業に対するリスク分析の甘さ等から、これらの機会に際し、実態把握のための適切な対応をとることができず、結果として、問題の存在を見過ごすことになったものといえる。 」p45
と記載されている。しかし、この経緯では、「見過ごし」という捉え方でよいのか、多大な疑問がある。
株式の売却を含め、代表者の行動として正しかったのか。
取締役は、見て見ぬふり、付和雷同していたのではないのか。
それがさらに問われていくことになるだろう。