遺産分割調停内での使途不明金の扱い

遺産分割調停内で、被相続人の財産からの使途不明金について解決できるか?

 

・調査が重要

使途不明金問題がある場合、調停や訴訟を見越して、弁護士に相談すること。

取引履歴は、基本的証拠となる。

払戻請求書や預金解約申込書の写しなどは、相続人だというだけでは金融機関が開示しないこともある。

開示を拒否された場合には、調停や訴訟で、裁判所からの調査嘱託や文書送付嘱託を用いて、開示を求める。ただ、遺産分割調停は本来残っている財産を「分割」する手続であり、相手方が遺産に含めて扱うことに同意することが前提となろう。

弁護士会を通じた弁護士法に基づく照会を用いるのも一案である。

医療記録・介護記録等についても、必要に応じて調査する(病院や施設によって、スムーズさは異なる。)。

介護認定記録についても、調査を試みるが、個人情報云々と言われて困難なこともある(役所によって対応が異なる。)。

払い戻された金額、時期、使途、被相続人の当時の身体能力や事理弁識能力などによって、それ以上の追及ができるかできないかが異なってくる。

 

・調停で扱えるか?

遺産分割調停は、本来は、残っている財産の分割を話し合う場。

遺産分割調停がまとまらなければ、裁判所が結論を決める遺産分割審判となるが、それについても同様。使い込んだお金を返せ、ということを求める場ではない。

しかし、使途不明金だと思われたお金について、いずれかの相続人が「私が使った、無断でもらった」と認めたのであれば、その金額をすでにもらった計算をして、遺産分割調停内で解決することも可能。また、「被相続人が私にくれたからもらった」という話であっても、特別受益(生前贈与)として遺産分割調停において処理することができる。

なお、民法の改正により、民法906条の2第1項で、被相続人の死後、遺産分割前に引き出された預貯金に関しては、「遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。」とされ、このような取扱いが明記された。

 

・訴訟を見越した調停のため弁護士関与が重要

このように使途不明金が絡むと、調停や審判での解決範囲と訴訟での解決範囲が一部重なり合う、複雑な状況が生じるので、財産にタッチしていた側・タッチしていなかった側、どちらの立場でも、弁護士のサポートを受けて、訴訟を見越した調停・審判対応が重要となる。

 

相続に関する案件に力を入れている弁護士です。

弁護士 山岸陽平(金沢法律事務所/石川県金沢市

法律相談のご予約は→ TEL 076-208-3227

遺言書保管制度における指定者通知の運用の変更

地方法務局では、遺言書保管制度を運用しています。これは自筆証書遺言を法務局で保管してもらうものであり、特筆すべきメリットとしては、相続開始後に家庭裁判所での検認が要らなくなるということがあります。また、公証人役場での公正証書遺言作成ほどまでには心理的・経済的な負担が重くないということもあります。

 

私(弁護士 山岸陽平)は、自筆証書遺言の作成と、地方法務局での保管手続のサポートを行った経験があります。専門家として、公正証書遺言を勧めたい場面と、自筆証書遺言&法務局保管を勧めたい場面と、どちらもありえます。ケースバイケースでアドバイスが変わってくると思われるので、ご自分の場合でどうなのかをお聞きになりたい場合は、法律相談にお越し下さい。

 

さて、法務局で遺言書を保管してもらった場合、以下のような通知の対象になります。

関係遺言書保管通知
相続人のうちのどなたか一人が,遺言書保管所において遺言書の閲覧をしたり,遺言書情報証明書の交付を受けた場合,その他の相続人全員に対して,遺言書保管所に関係する遺言書が保管されている旨のお知らせが届きます。
指定者通知
遺言者があらかじめこの通知を希望している場合,その通知対象とされた方(遺言者1名につき、3名まで指定可)に対しては,遺言書保管所において,法務局の戸籍担当部局との連携により遺言者の死亡の事実が確認できた時に,相続人等の方々の閲覧等を待たずに,遺言書保管所に関係する遺言書が保管されている旨のお知らせが届きます。

この通知のうち、「指定者通知」に関する制度運用は、今年10月から変わったものであり、通知できる人数が1人から3人までに。また、通知対象者として指定できるのが、これまで推定相続人・受遺者・遺言執行者などに限定されていたところ、限定なしになりました。

1人しか通知できず、通知対象にしていた人に何かあった場合には、通知が無意味になってしまった・・・あるいはそのおそれがあるがどうすればいいか・・・という問題があったのでしょうか。

いずれにしても、遺言に関わる専門家の目から見れば、3人のうち1人を作成に関与した専門家としておくことで、相続開始の際に的確に動ける可能性が高まりますから、便利にシフトした運用変更だといえそうです。

「遺留分侵害額請求権」とは?

石川県金沢市の弁護士 山岸陽平です。

 

相続・遺産分割に関する案件を多く取り扱っています。

残念ながら争いになってしまっているような案件についても、解決のためにお引き受けしていますので、相続案件はぜひご相談下さい。

相続にあたっては、情報の非対称性があります。ごまかされているかもしれないから調べてほしい・代理人になって先方と話をしてほしい、というご依頼もお引き受けします。

 

今回は、「遺留分侵害額請求権」について説明します。

 

遺留分侵害額請求権」・・・難しい用語で、どういう場合に問題になるのかわかりにくいと思います。

 

まずは、「遺留分」から知っていく必要がありますね。

 

遺留分とは、被相続人が有していた相続財産について、その一定割合の承継を一定の法定相続人に保障する制度です。

 

この制度がある理由は、次のようなことだと言われています。

被相続人は、自分の財産を自由に使ったり、行き先を決めることができるのが原則ではあるところですが、本来相続人となったはずの人たち(たとえば、配偶者や子ども)においても、生活保障のためなど期待していたものがあるはずだから、取り分0とされるのはあまりに不公平ではないか、ということです。

 

実際、弁護士山岸陽平が、弁護士として、遺留分の侵害を問題にすることの多いケースは、「不公平な遺言」や「不公平な贈与」であり、場合によっては「疑わしいお金の引き出し」が絡むこともあります。

相続財産(不動産などを含む)が多額にのぼるのに、不公平な遺言や贈与によって、期待していた相続分をほとんど取れなかった、というような場合に、遺留分が侵害されたといえることが多いのです。

 

遺言作成に私、山岸など弁護士が関わることもありますが、その際には、遺留分のことをしっかり意識したうえで遺言の作成にたずさわります。なぜかというと、相続人の間(特に兄弟姉妹)であまりに差がつく遺言をつくると、遺留分を侵害した状態になりやすいからです。

そうした「差がつく」遺言がある場合には、遺留分を侵害している可能性が高いので、財産を調査したり、他の相続人から情報を集めて、遺留分侵害の有無や遺留分の金額を算出することになります。

 

遺留分の割合は、ほとんどの場合は、法定相続分の割合に2分の1をかけたものになります。(親だけが相続人であるなどの特殊な場合には割合が異なります。)

たとえば、①配偶者がすでにおらず、子が3名の場合法定相続分はそれぞれ3分の1、遺留分はそれぞれ6分の1となります。

たとえば、②配偶者がおり、子が2名の場合法定相続分は、配偶者が2分の1、子がそれぞれ4分の1となりますし、遺留分は、配偶者が4分の1、子がそれぞれ8分の1となります。

上の①の場合でいえば、子A、子B、子Cがいるときに、子Aと子Bとで親の遺産を50%ずつわける遺言が残されていた。子Cは相続できないとされていた。すると、子Cの遺留分が侵害される状況になります。

 

遺留分を侵害しているかどうかは、ある程度の遺産の概要や、遺言・贈与の内容がわかれば、判断できることが多いです。ただ、遺留分の金額は、遺産(特に不動産など)の評価によって変動するので、調べを尽くし、また他の相続人から情報を集めないと詳細には算出できないことが多いです。

そのため、弁護士に相談し、依頼をする必要性が高くなります。

(税務申告の都合もありますので、まずは税理士と相談なさるケースもありうると思います。)

 

以上、「遺留分」についての一応の説明でした。

 

 

次に、「遺留分侵害額請求権」について説明していきます。

 

現行民法では、遺留分侵害額請求の意思を表示(たとえば、内容証明郵便で通知するということ)することで、遺留分の侵害額に相当する金銭の給付を被侵害者に対してしなければならない義務が、侵害者に生じるとされています。(民法改正前は、金銭請求ではなく、個別の財産を割合的に取得することになっていました。これが非常に煩雑であるとして、民法改正により、金銭請求に一本化されました。)

逆に言えば、「遺留分侵害額を請求します!」と伝えないと、遺留分の侵害額が移転しないということになります(とても不利な遺言でも、不利を受けた側がそれでいいと言えば、問題にならないというわけです。)。

この権利を行使するかどうかが、大きな分かれ道になります。この権利を行使するかどうか決めるだけでも、弁護士に法律相談する価値がありそうです。弁護士山岸陽平は、こうした問題について取り扱っており、遺留分侵害額請求の権利行使をするかどうかに関する法律相談に対応しています。

この権利行使(意思表示)の仕方は、訴える必要はありません。しかし、伝えた証拠を残す必要はあるので、弁護士が代理人としてする場合には、内容証明郵便など、後日問題にならない方法で行います。

遺留分侵害額を請求したのに支払いがされない(金額に争いがある)場合には、まず、家庭裁判所の調停で話し合いをし、それでも決着がつかない場合には、訴訟で決めることになります。

家庭裁判所の調停で代理人をすることができるのは、基本的には弁護士に限られています。また、訴訟についても、訴額がかなり安いなどの例外を除き、代理人として委任できるのは弁護士に限られています。

そのため、簡単に遺留分侵害額を算出できて支払いに応じてもらえるケースはともかく、そうでないケースの場合は、相続問題、特に遺留分についてよくわかっている弁護士に相談し、弁護士を代理人に立てる方がよりよいといえます。

注意しなければならないのは、時効です! 遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効により消滅するとされています。

相続開始や遺留分侵害を知らないで相続開始から10年経過したときも、遺留分侵害額請求権は消滅します。

弁護士山岸陽平は、遺留分侵害額請求権の行使に関する法律相談や、案件の受任を多数経験しています。そのため、この難解な問題に対応することができます。

 

もし、石川県、富山県福井県など北陸近辺の被相続人に関するか、あるいは、ご相談者さんか相手方が北陸近辺に在住されているということであれば、ぜひ弁護士山岸陽平に、相続問題・遺産分割問題、遺留分に関する問題をご相談下さい。

 

金沢法律事務所サイト

https://www.bengokanazawa.jp/

金沢法律事務所サイト~遺留分について~

https://www.bengokanazawa.com/

 

金沢法律事務所 弁護士 山岸陽平

電話 076ー208ー3227

配偶者居住権が新設されました

相続法の改正スケジュール

近時、相続法の大きな改正がありましたが、施行時期は散らばっています。

■ 2020年3月時点で施行済み

自筆証書遺言の方式の緩和(2019年1月13日施行)

夫婦間での居住用不動産の贈与の優遇(2019年7月1日施行)

預貯金の払戻し制度の新設(2019年7月1日施行)

遺留分制度の見直し(2019年7月1日施行)

特別の寄与の制度の新設(2019年7月1日施行)

■ 2020年3月時点で未施行

配偶者居住権の新設(2020年4月1日から施行)

法務局での遺言の保管制度の新設(2020年7月10日から施行)

 

2020年4月1日から、配偶者居住権が新設されます

2020年4月1日以降に死亡したことにより開始される相続について、配偶者居住権の制度が適用されます。

たとえば、夫が死亡したとき、妻と子2名が相続人だとして、妻は法定相続分として2分の1の権利を有しますが、不動産を相続する場合には、現金・預貯金の取り分が極端に小さくなる場合があるというのが問題になってきました。

このような問題があるとき、配偶者居住権制度を適用することで、配偶者居住権を妻が得て、その負担付き所有権(妻(子にとっての母)がその家に住み続けるのを許すという負担が付いた所有権)を子が取得するやり方が取れます。

こうすることで、妻が取得できる現金・預貯金が増えるのです。

親族間での意思疎通がなければむしろトラブルに?

この配偶者居住権の制度。設定するには、遺言か、あるいは、被相続人の死亡後の遺産分割協議で話し合いで決めるかが基本です。ほかには、審判で裁判所が定めるパターンもあります。

遺言で設定するとして、相続人が遺言内容を知らず、どちらかの相続人が遺言の内容に不満を持つような場合、負担付き所有権を取得する側か居住権を得る側のどちらかが、その状態を嫌っているとすれば、いやおうなく争いになってしまうおそれがありますし、少なくとも、全然気持ちの良い状態ではありません。

また、遺産分割協議で話し合いが付くならいいのですが、審判で裁判所に決めてもらうとすると、負担付き所有権を得ることになった子は強い不満を持つでしょう。

このように、親族間の意思疎通がなければ、トラブルを招きやすいので、安易におすすめできないところがあります。

よく検討してから採用すべき

こうしたことから、夫から妻への相続を夫婦が考えるに当たっては、「配偶者居住権の制度というなんとなくいいものができたので、是非それをお願いします」などと安易に進めていくのではなく、配偶者居住権の制度を使うのがいいかどうか、弁護士などの専門家(プラス税理士など)と一緒によく検討して、また、できるだけ、負担付きの所有権を取得することになる方の理解も得ておくことが重要になります。

医療・福祉の「惑星直列」 データを分かち合い、議論の足場を作ろう

「惑星直列」の2018年

2018年は、▼国民健康保険の財政が市町村から都道府県単位に移行する、▼診療報酬(2年周期)と介護報酬(3年周期)の同時改定があるほか、▼医療費適正化に向けて都道府県が策定した「地域医療構想」が本格的に始まり、▼第7次医療計画と第7期介護保険事業計画などもスタートする。

そのため、2018年は、医療政策の関係者の間では「惑星直列」「当たり年」などと呼ばれている。

すでに、診療報酬、介護報酬の改定についての動向が報じられ、「介護医療院」の創設など、賛否も飛び交っている。

 

財源や人手不足に苦しむ医療・福祉

現状、高齢社会の支え手不足が財政面でも人材面でも顕著であり、事業者側(特に介護事業者)にも困難な先行きが見込まれている。

さらなる財源確保が困難であるので、財務当局は給付抑制に躍起になり、厚生労働省が苦心して政策誘導を行っているが、人材不足の対策が不十分である等の批判が多く見られるところである。

将来的には、ICTや介護ロボットの導入がどのような効果をもたらすか気になるところであるが、サービスは抑制ないし効率化が図られ、利用者にとっても事業者にとっても非常に厳しい状況が続くものとみられる。

 

地域住民や利用者にもわかりやすいデータが必要

都道府県において、地域医療構想の策定が試みられている。住民代表の委員や公募委員が参加し、意見を述べる形は取られているものの、基本的には、行政当局と医療関係者が将来像を先取りして作り上げた流れがすでにある。

利用者、住民(利用者の家族や将来の利用者を含む)は、どこまで議論を知っているか? そして、議論に参加しようとしたときに、どれだけの足がかりがあるのか?

利用者本位であるためにも、また、行政や事業者が硬直的にならず、有意義な取り組みを行っていくためにも、情報やデータを整理した上で、アクセスしやすくすることが必要だろう。

 

個人的には・・・

仕事上「法的責任」や「権利」について関わっていくというだけではなく、さらに医療や福祉の経営やそれを取り巻く状況について知識を深めていきたい。いま問題となっていること、新しい動きについて、把握していきたい。

 

 

金沢法律事務所 弁護士 山岸陽平

高齢者・障がい者が法律事務所に行けない場合の相談方法

 高齢者・障がい者の方々も、様々な法律問題になやまされることがあります。しかし、なかなか弁護士への法律相談にまで到達すること自体簡単ではないというところがあります。

 以下のような事情が絡み合っていることが多いかと思います。

 

1 情報不足、情報を探す手段の不足

 相談できる弁護士として、どこに誰がいるのかわからない。

 弁護士を紹介してくれる機関がどこなのかわからない。

 どうやって探せばよいかわからない。

 弁護士に相談したら何とかなる内容かどうかわからない。

2 心理的側面

 弁護士に会うことがおっくう。怖い。

 うまく話ができるかわからない。

 弁護士に相談したい内容をまず誰かに話すことがおっくう。

 弁護士に相談したいということをまず誰かに話すことがおっくう。

 

3 金銭的側面

 相談料が負担できない。

 相談料が高そう。

4 身体的側面

 自分で法律事務所に行ける身体状況ではない。

 

 このうち、1・2については、私を含め、弁護士からのつなげる努力が足りない面はあります。特に、高齢者・障がい者の方々ご自身が動いて、というよりも、高齢者・障がい者の方に普段接する機会の多い方々(支援者、行政)をつたって、探しやすく、連絡をしやすいようにしていきたいところです。

 3については、弁護士には、健康保険のような制度の適用はないので、直接的に相談料のご負担をいただくことになっています。ただ、相談料の設定は事務所ごとに違います(案件ごとの設定があったり、初回無料になっていることもあります)。

 4については、これも、弁護士がご相談者のご要望に応じて訪問相談をすることは自由なのですが、初めての相談者に対して日常的にそうしたやり方を取っている弁護士は少ないと思います。

 

 なお、3については、日本司法支援センター(法テラス)が、資力の乏しい方のために法律援助制度を設けており、法律相談であれば、同一案件3回まで無料で弁護士に相談することができます。これは、法テラスに直接申し込むのが一般的なやり方ではありますが、法テラスと契約をしている弁護士の承諾があれば、特定の弁護士と約束をして無料の法律相談を受けることもできます。(私は、法テラスの制度を使った無料相談をお受けしています。ご関心の方はお問い合わせ下さい。)

 また、4についても、法テラスは、法律事務所に行ける身体状況ではない方からの申込みにより、弁護士の無料出張相談の援助をしています。これについても、ご関心の方はお問い合わせ下さい。

 

 そして、このたび、認知機能が十分でない方が抱えている法律問題について、地域包括センター、社会福祉協議会、施設、病院などの支援者から申し込みをし、弁護士がご本人のもとに出張するという、法テラスの新しい制度ができました(2018年1月24日開始です)。これは、弁護士にとってみれば、認知機能が十分ではない方との法律相談を支援者の方の協力を得て行うということで、かなりチャレンジングな取り組みになります。

 法テラスへの申込みのほか、弁護士が申込手続をサポートして申込書を作成することもできるとされていますので、ご興味がおありの石川県内の支援者の方は、私までお問い合わせをお願いします。(上記の出張相談が該当するか、この新制度が該当するか分からない、という場合でも、お聞き下さい。)

平成30年1月24日から特定援助対象者に対する新たな援助が始まります。  法テラス|法律を知る  相談窓口を知る  道しるべ

 

 高齢者・障がい者の方に比較的多いのは、相続問題、財産管理の問題、家族関係の問題、消費者被害といったことだと思います。こうした問題について、できるだけ深刻な問題にならないよう、また、権利の確保がなされるようにするために、取り組んでいきたいと思います。

「仮分割の仮処分」の申立てについて

相続・遺産分割に多大な影響をもたらす最高裁平成28年12月19日決定(以下のとおり、本ブログでも取り扱っています)を受け、家裁の実務にも変化が出てくるようです。

souzoku-blog.yybengo.com

 

大谷剛彦ほかの補足意見が重要ですので、引用します。

裁判官大谷剛彦,同小貫芳信,同山崎敏充,同小池裕,同木澤克之の補足意見は,次のとおりである。

従来,預貯金債権は相続開始と同時に当然に各共同相続人に分割され,各共同相続人は,当該債権のうち自己に帰属した分を単独で行使することができるものと解されていたが,多数意見によって遺産分割の対象となるものとされた預貯金債権は,遺産分割までの間,共同相続人全員が共同して行使しなければならないこととなる。そうすると,例えば,共同相続人において被相続人が負っていた債務の弁済をする必要がある,あるいは,被相続人から扶養を受けていた共同相続人の当面の生活費を支出する必要があるなどの事情により被相続人が有していた預貯金を遺産分割前に払い戻す必要があるにもかかわらず,共同相続人全員の同意を得ることができない場合に不都合が生ずるのではないかが問題となり得る。このような場合,現行法の下では,遺産の分割の審判事件を本案とする保全処分として,例えば,特定の共同相続人の急迫の危険を防止するために,相続財産中の特定の預貯金債権を当該共同相続人に仮に取得させる仮処分(仮分割の仮処分。家事事件手続法200条2項)等を活用することが考えられ,これにより,共同相続人間の実質的公平を確保しつつ,個別的な権利行使の必要性に対応することができるであろう。

もとより,預貯金を払い戻す必要がある場合としてはいくつかの類型があり得るから,それぞれの類型に応じて保全の必要性等保全処分が認められるための要件やその疎明の在り方を検討する必要があり,今後,家庭裁判所の実務において,その適切な運用に向けた検討が行われることが望まれる。

 

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/354/086354_hanrei.pdf

 

家事事件手続法200条は、次の条文です。

(遺産の分割の審判事件を本案とする保全処分)

第二百条  家庭裁判所(第百五条第二項の場合にあっては、高等裁判所。次項において同じ。)は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、財産の管理のため必要があるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てさせないで、遺産の分割の申立てについての審判が効力を生ずるまでの間、財産の管理者を選任し、又は事件の関係人に対し、財産の管理に関する事項を指示することができる。
2  家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、強制執行保全し、又は事件の関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、当該申立てをした者又は相手方の申立てにより、遺産の分割の審判を本案とする仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。
3  第百二十五条第一項から第六項までの規定及び民法第二十七条 から第二十九条 まで(同法第二十七条第二項 を除く。)の規定は、第一項の財産の管理者について準用する。この場合において、第百二十五条第三項中「成年被後見人の財産」とあるのは、「遺産」と読み替えるものとする。

 

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H23/H23HO052.html

 

これに関し、日本加除出版の『家庭の法と裁判』2017年9月号の特集座談会(大法廷決定をめぐって)において、片岡武東京家裁判事が裁判所内での検討結果を説明しています。

片岡判事は、仮分割仮処分の類型は、3つが一応考えられるのではないかと言っています。

類型1 扶養を受けていた共同相続人の生活費とか施設入所費の支払を目的とする場合

類型2 葬儀費用とか相続税の支払など相続に伴う費用の支払を目的とする場合

類型3 被相続人の医療費と被相続人の債務の支払を目的とする場合

確かに、これらに関しては、遺産分割がすぐにまとまらなくても対処が必要な事項でしょう。新判例が出されて一部の払戻しの請求が困難となったなかで、仮処分の申立てをすることができれば便利なケースも出てくるでしょう。