配偶者居住権が新設されました

相続法の改正スケジュール

近時、相続法の大きな改正がありましたが、施行時期は散らばっています。

■ 2020年3月時点で施行済み

自筆証書遺言の方式の緩和(2019年1月13日施行)

夫婦間での居住用不動産の贈与の優遇(2019年7月1日施行)

預貯金の払戻し制度の新設(2019年7月1日施行)

遺留分制度の見直し(2019年7月1日施行)

特別の寄与の制度の新設(2019年7月1日施行)

■ 2020年3月時点で未施行

配偶者居住権の新設(2020年4月1日から施行)

法務局での遺言の保管制度の新設(2020年7月10日から施行)

 

2020年4月1日から、配偶者居住権が新設されます

2020年4月1日以降に死亡したことにより開始される相続について、配偶者居住権の制度が適用されます。

たとえば、夫が死亡したとき、妻と子2名が相続人だとして、妻は法定相続分として2分の1の権利を有しますが、不動産を相続する場合には、現金・預貯金の取り分が極端に小さくなる場合があるというのが問題になってきました。

このような問題があるとき、配偶者居住権制度を適用することで、配偶者居住権を妻が得て、その負担付き所有権(妻(子にとっての母)がその家に住み続けるのを許すという負担が付いた所有権)を子が取得するやり方が取れます。

こうすることで、妻が取得できる現金・預貯金が増えるのです。

親族間での意思疎通がなければむしろトラブルに?

この配偶者居住権の制度。設定するには、遺言か、あるいは、被相続人の死亡後の遺産分割協議で話し合いで決めるかが基本です。ほかには、審判で裁判所が定めるパターンもあります。

遺言で設定するとして、相続人が遺言内容を知らず、どちらかの相続人が遺言の内容に不満を持つような場合、負担付き所有権を取得する側か居住権を得る側のどちらかが、その状態を嫌っているとすれば、いやおうなく争いになってしまうおそれがありますし、少なくとも、全然気持ちの良い状態ではありません。

また、遺産分割協議で話し合いが付くならいいのですが、審判で裁判所に決めてもらうとすると、負担付き所有権を得ることになった子は強い不満を持つでしょう。

このように、親族間の意思疎通がなければ、トラブルを招きやすいので、安易におすすめできないところがあります。

よく検討してから採用すべき

こうしたことから、夫から妻への相続を夫婦が考えるに当たっては、「配偶者居住権の制度というなんとなくいいものができたので、是非それをお願いします」などと安易に進めていくのではなく、配偶者居住権の制度を使うのがいいかどうか、弁護士などの専門家(プラス税理士など)と一緒によく検討して、また、できるだけ、負担付きの所有権を取得することになる方の理解も得ておくことが重要になります。