社会福祉法人に関する情報公開請求、社会福祉法人の理事・監事の人数

情報公開で得られる、社会福祉法人の運営情報

数年前、受任した労働事件の関係で、中核市社会福祉法人の情報公開請求をしたことがあった。

社会福祉法人は、行政による監査を受けなければならないことになっているから、監査のために提出された資料が行政に存在するわけである。

 

行政監査、理事・監事の人数・・・

そのときは、個人情報に当たる部分は一部黒塗りにされていたものの、得難い情報を得ることができた。

また、ついでに発見したことであるが、監査の際に届け出られた理事・監事の人数と、登記上のそれが異なっていることを発見した。

当時の(旧)社会福祉法 36 条1項では、「理事3人以上・監事1人以上」と定められているけれども、社会福祉法人審査基準では「理事6人以上、監事2人以上」とされているので、事実上は「理事6人以上、監事2人以上」が求められていた。そして、その監査の届出には、確かに「理事6人以上、監事2人以上」の人員(名前)が記載されていたが、登記されていたのは理事3人・監事1人だったのである。

そして、監査における指摘事項が、常に指摘され続けても直っていない。

そのときは、そうした行政監査が実態なのかと残念に思った記憶がある。

 

新法における理事・監事の人数は?

平成28年3月31日、改正社会福祉法が成立し、主な改正事項は平成29年4月1日からの施行となった。

新・社会福祉法44条3項では、社会福祉法人の理事の員数は6人以上、監事の員数は2人以上になった。

 

社会福祉法人の社会的責任、法律家の役回り

社会福祉法人は、社会的責任が大きく、適正にガバナンスを構築すべきであったが、これまでそれをおろそかにしてきた法人が多く、内部留保の問題や各種の不祥事の発生から社会の目が厳しくなり、政府・厚生労働省も抜本的な改革に乗り出したという流れである。

法律家も、社会福祉法人のガバナンス改革に携わっていくためには、社会福祉、経営、そして、できれば財務・税務の基礎について知識を積み重ね、改正された制度の枢要点を見極めて助言できなければならないだろう。

そして、その場限りで切り抜けてよしとするようなサービスや組織ではなく、真に健全で人のためになるサービスや組織をつくり維持していくことに貢献していければ幸いである。

しっかりと腰を据えて取り組んでいる弁護士も多くないと思うけれども、この機会にさらに勉強を進めることができれば、と思っている。

 

 金沢法律事務所 弁護士 山岸陽平